熊本教育ネットワークユニオン

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「雇用と職業における平等」は重要な本だった。

「「雇用と職業における平等」ILO111号条約に関する条約勧告適用専門家委員会特別調査国際労働総会83会期(1996)」

この本はやはり重要な本だった。

11月20日の「再びILO111号について=お教えください」の回答でもあった。

 

ILOは111号条約を批准していない国に

憲章19条で

5 条約の場合には、

(a) 条約は、批准のためにすべての加盟国に送付する。

(b) 各加盟国は、立法又は他の措置のために、総会の会期の終了後おそくとも1年以内に、又は例外的な事情のために1年以内に不可能であるときはその後なるべくすみやかに、且つ、いかなる場合にも総会の会期の終了後18箇月以内に、条約を当該事項について権限のある機関に提出することを約束する。

(c) 加盟国は、条約を前記の権限のある機関に提出するためにこの条に従って執った措置、権限があると認められる機関に関する細目及びこの機関が執った措置を国際労働事務局長に通知しなければならない。

(d) 加盟国は、当該事項について権限のある機関の同意を得たときは、条約の正式の批准を事務局長に通知し、且つ、条約の規定を実施するために必要な措置を執る。

(e) 加盟国は、当該事項について権限のある機関の同意を得なかったときは、条約で取り扱われている事項に関する自国の法律及び慣行の現況を、理事会が要請する適当な間隔をおいて、国際労働事務局長に報告する以外には、いかなる義務も負わない。この報告には、立法、行政的措置、労働協約又はその他によって条約の規定のいずれがどの程度に実施されているか、又は実施されようとしているかが示され、且つ、条約の批准を妨げ、又は遅延される障害が述べられていなければならない。

 としている。

そして、 

「理事会が要請する適当な間隔」=を⇒ILO 第328回ILO理事会で4年毎と決められた。

            

 

この本の「第Ⅱ部 特別報告の分析」には未批准の国がなぜ批准が遅れているかの理由を報告している部分があります。(70ページ以降です。)日本のところは76ページに

153.6カ国は、目下のところ批准の見込みなしと述べている。

(a)バーレーン政府は・・・・・

(b)日本政府は、批准については留保したうえで、本条約と国内法の適合性が議論されなければならないと述べている。従って同政府は進行中の検討を続けるとしている。同政府は、本条約に体現された諸原則を実施しているいくつかの規定を引用し、雇用における男女間の機会と均等待遇の促進を望むと述べている。また特定の民間部門において、労働者の社会的出身に基づく差別が行われる傾向があることを把握しているが、これに対しては適切な措置が取られていると述べている。

(c)マレーシア政府は・・・・・。

 と続きます(下線はブログ記入者)。

   まとめると

   ①日本政府は批准は留保。

   ②条約と国内法の適合性が議論されなければならない。

   ③検討を続けるとしている。

   ④条約の諸原則を実施しているいくつかの規定を引用して、雇用における

   男女間の機会と均等待遇の促進を望むと述べた。

   ⑤特定の民間部門において、労働者の社会的出身に基づく差別が行われる

   傾向があることを把握している。これに対して適切な措置が取っていると

   述べている。

 

この本の訳者グループ(九大大学院吾郷ゼミと横田ゼミ)の吾郷眞一さんは『部落解放』482号に論文(「ILO111号条約の早期批准と日本の課題」)で次のように述べられています。少し長いですが引用します。

日本が批准していない理由 

 条約がILOで採択されると、それを批准するべきかどうかは、それぞれの加盟国に委ねられています。加盟国はILOに対して、なぜ批准できないかとか、批准するために何をやっているかということを報告する義務があります。批准する義務はないけれども、批准していない理由を述べなければならない義務がある。

 1996年にILOの事務局が出版した『雇用と職業における平等』には、111号条約を批准していない国が送ってきた報告書のなかから、なぜ批准が遅れているかを、国別に掲げている部分があります。イギリス、アメリカ、韓国、タイも批准していません。タイは「国内にはまだまだ男性中心的な風潮が残っており、それが変わらない限り批准することはむずかしい」と述べています。率直な報告です。韓国は近々批准すると96年の段階では述べています。アメリカの場合は、連邦制をとっているために労働行政がそれぞれの州の専権事項となっていて、ワシントンの連邦政府が国際条約を批准しにくいという表向きの理由が主となっています。

 日本政府が述べた理由は、要約すると、「国内法と条約規定が調和するかどうかは慎重な検討が必要であるが、この条約については引き続き検討している」ということを抽象的に述べています。それに引き続いて、「この条約の実施に必要な法整備も進めており、雇用における男女の均等待遇については法整備をすませた。一定の私的セクターにおいて、労働者の社会的出身に基づく差別が行われる傾向があることを承知しているが、これに対しては適切な措置がとられている」という記述があります。

 この短い文から想像すると、政府が批准していない理由の一つは、いわゆる、「私的セクターにおいて、労働者の社会的出身に基づく差別が行われる傾向があること」を認識していること、それについての十分な法的対処がおこなわれていないというところにあるように思われます。部落差別という社会的出身に基づく差別があることを承知している、これに対して、適切な措置はとられているが、「実施に必要な法整備を進めている」ということは、いまはまだ法整備が完成していないと認識しているのではないか。したがって、日本政府はこの法整備が整ったところで批准を考えてもいいというように受けとめられる。

 以上はhttp://www.blhrri.org/old/info/koza/koza_0004.htm(部落解放・人権研究所HP)から引用しました。

 

日本の報告を見たい(読みたい)ものですね。