熊本教育ネットワークユニオン

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「ここまで出来た非常勤講師待遇改善」(官製ワーキングプア研究会レポート20 に 活動を投稿)

官製ワーキングプア研究会レポート20に活動投稿

官製ワーキングプア研究会( http://kwpk.web.fc2.com/ )から投稿依頼がありました。今までの活動を要約しました。

ここまで出来た非常勤講師の待遇改善

        熊本教育ネットワークユニオン 小林敏夫

  賃金水準が極めて低位でサービス業務が多すぎる公立学校非常勤講師。改善も取り残され気味の職種。労働組合としての取組みをすすめ一定の前進を得た。

1 熊本教育ネットワークユニオン

 1996年熊本高教組は、組織していたPTA雇用職員の解雇攻撃に対して裁判闘争を含む解雇撤回闘争に取り組む中、いくつかの教育関連単組で構成する複合産別・熊本教育ユニオンを結成した。 

 結成当時は熊本県高等学校教職員組合熊本県立学校団体費雇用職員組合、学校現業労働組合、臨時調理員組合、学校警備員労働組合からなり、その後ルーテル学院大学教職員会(1998年)、尚絅大学教職員会(2007年)と私たち熊本教育ネットワークユニオン(2001年)がそれぞれ結成され、教育ユニオンに加入した。

 熊本教育ネットワークユニオンは地公法適用除外職種のうち他の単組に所属しない人の加入のため結成された。主に高教組等の書記、非常勤講師(地公法3条3項3号にて任用)、連合熊本への出向者等で構成された。

2 県立学校非常勤講師問題に取組む

(1)実態調査

 2013年度の定期大会で非常勤講師問題に取組むことを決定し、まず「職場アンケート」を実施した(回収80枚程度(25%))。

定年後でも青少年の教育ために力を尽くしたいので待遇はあまり考えないという者もいた。一方、非常勤講師の収入が主たる生活費の者(20%)と仕送りと非常勤講師の収入で暮らしている者(14%)の両者をあわせると全体の1/3におよぶこともわかった。

 試験問題作成・時間外居残り指導・考査監督にはそれぞれに概ね半数が、採点業務には8割以上が携わっていた。賃金は考査監督には出ているものの、その他の業務には出ていない傾向があった。アンケートの記述式回答部分では給与の改善(月額保障)要求、必要でありかつサービスで行っている業務に対する賃金要求、差別的待遇や理不尽な扱いの解消が求められていた。

(2)要求のまとめあげと提出

 アンケートの結果を公表し、幾度も執行委員会で検討し、熊本高教組と共催で『「学び・語り・要求する」学習会』を実施した(2014年5月)。そのようにして練り上げた要求書を 2014年10月知事と教育長宛に提出した。

 要求内容の概略は①採用時の労働条件の明示②賃金(月額最低保障賃金要求、一時金・定通手当相当分・部活動指導報酬・考査問題作成・居残り指導・採点業務・学校行事指導・教科書選定・教材購入事務・実験実習安全確保業務・単位認定会議・学期初めの共通理解に必要な会議への出席への賃金支払い要求)③その他の要求(健康診断書提出の改善、免許状写の提出の改善、複数校勤務者への書類提出の改善、パソコン、ロッカー等の貸与)である。

(3)労働委員会へ不当労働行為救済申立

 要求書提出から再三の団体交渉催促にもかかわらず、交渉が実現せず半年以上が経過した。そのため熊本県労働委員会へ不当労働行為救済申立を行った(2015年5月)。2回の調査後、県は教育委員会とユニオンで締結した労働協約の効力が県を当事者として生じる旨の確認書の提出を表明し、県教委は交渉担当者として労働協約締結権の権限が付与されていることが重要という認識も示し、団体交渉を始めるに至った。

(4)団体交渉の実現(2015年9月)

 まず、「団体交渉に関する労働協約」を締結し交渉の基本を確認した。団交には教育総務局長が出席し、合計6回の団交を行った。団交の成果は「非常勤講師の勤務条件に関する労働協約」として結実した(2016年2月)。

 協約に従い、2016年度より県教委は「勤務条件通知書」を文書により明示し、報酬範囲を「授業」と「職務命令による業務」に分け、後者に定期考査・成績処理等、教科会及び補講、その他(新任式等、職員会議等、学校行事等、その他)を明記した。また、任用手続時の免許状・健康診断書の提出にも改善が図られた。

(5)新年度になり

 県教委は4月新しい通知文を発し、報酬対象業務範囲を示した。非常勤講師からの喜びの声もあがったが、通知文に「時間数の限度(1)発令期間内の総時間数は期間限度時間数を超えないこと。(2)各週の時間数は原則として、あらかじめ組まれている非常勤講師本人の週当たり委嘱時間数を超えないこと。」とあり、このことにより「仕事はしなければならないが、報酬は出ない」状況があることが分かってきた。これを改善すべく8月に団交の申入れを行った(熊本地震のため遅くなった)。2度の団交の末「時間数の限度は授業時間の限度」であることを確認し、確認書を取り交わした。

 その結果はユニオンからすべての非常勤講師に直接郵送で伝えられた。そして高教組の協力を得て再度のアンケートを実施中である。この取組みを契機に組合への加入者も増えてきている。

3 終わりに

 振り返ると私たちの武器は、地方公務員法の適用除外であるがゆえに持つ「労働協約締結権」と結成当時からの私たちが目指す「労働条件の改善の運動と教育活動を常に結合すること。即ち働きやすい職場づくりが子どもたちの学習環境を整えることと直接・間接につながっている」という信念であった。

 いままで曖昧だったことを交渉できちんと取決めをしたという当然のことだが、私たちにとっては未踏の道へ一歩踏み込んだ実感があり、感慨もひとしおである。

 しかし、労働協約を結んでも、それを実現させるには、不断の努力が必要であることも学ばされた取組みでもあった。

 

 連絡先

〒862-0950

熊本市中央区水前寺1丁目33-18水前寺共済会館3階熊本高教組気付

熊本教育ネットワークユニオン

自分たちの文章ですが、すでに「官製ワーキングプア研究会レポート20」として出回っていますので引用の形にしました。