私の折々のことば⑧
あいつの臓腑は
えらびとった言葉の塊。
しかもそれを
錬鉄の沈黙におきかえる
小癪な深夜の手品に
私の詩は
いつかな完成しない。
42行ある長い詩の最後の7行。 私が尊敬する高校化学教師、盛口襄さんの詩集(現代詩人叢書Ⅱ第17集 芸風書院)「盛口 襄詩集」に収められている「蟹」という詩。
「あいつ」とは、盛口さんが持っている、鉄の蟹の形をした「文鎮」。その「蟹」が、彼の就寝中(夜中)に、「おもちゃのチャチャチャ」よろしくカサコソと動き、詩人盛口さんが書いた詩の言葉を食ってしまうという話。
わかりやすく面白い詩で私が大好きな詩だ。
(熊本教育ネットワークユニオン Kob )