熊本教育ネットワークユニオン

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教育の無償制を進めるために

教育の無償制を進めるために             今泉克己

1 現状・・・文科省「子どもの学習費調査」から見える保護者負担

文科省が隔年で実施している学習費調査「2018(平成30)年度子どもの学習費調査」の結果は以下のようになっている。

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                         「統計で見る日本」より

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00400201&tstat=000001012023&cycle=0&tclass1=000001135827&tclass2=000001135828&tclass3=000001135829&tclass4val=0

(アクセス日 2021年4月6日)

憲法26条は教育を受ける権利を具体化するために2項で「無償の義務教育」を定めているが、現実には上記のように、学校教育に直接関わっている学校教育費や学校給食費さらには学校外活動費など、保護者は多額の教育費を負担している。

しかも、収入の多い家庭ほど多額の教育費を負担することができ、また、地域別に比較すると都市部ほど高額を負担している実態が現れている。保護者の収入の格差が子どもの教育費の格差に直結している現実が、文科省の調査から見て取れる。

文科省調査「平成30年度子供の学習費調査 2 調査結果の概要」 アクセス2021年5月2日 https://www.mext.go.jp/content/20191212-mxt_chousa01-000003123_03.pdf

 2 教育無償化への歴史的経験

教科書の無償化は高知県などの地方自治体が先導して実現した。国では「義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律」が1962年4月1日に施行され、学年進行方式で拡大されて69年度に中学校までの無償化が実現した。

また、文科省の2017(平成29)年度の「学校給食費の無償化等の実施状況」及び 「完全給食の実施状況」の調査結果について」によると給食の無償化が始まっていることが推測される。

学校給食費の無償化等の実施状況は1,740 自治体のうち、学校給食費の無償化を実施する自治体は次のとおり。

 ① 小学校・中学校とも無償化を実施…76 自治体(4.4%)

 ② 小学校のみ無償化を実施…4 自治体(0.2%)

③ 中学校のみ無償化を実施…2 自治体(0.1%)

※①は 71 自治体(93.4%)が町村であり、また、人口1万人未満の自治体が 56 自治体(73.7%)を占める。

※①の対象児童数は 41,254 人で、全国の小学校の在籍者数(6,347,066 人)の 0.6%、対象生徒数は 21,943 人で、全国の中学校の在籍者数(3,082,328 人)の0.7%を占める。

(httpswww.mext.go.jpb_menuhoudou3007__icsFilesafieldfile201807271407564_001_1.pdf)

因みに、今年の2月7日に執行された、私の街の宇城市長選挙では現職も対立候補もいずれも「学校給食の無償化」を公約にしていた。宇城市は人口6万人弱、小学校13校(児童数は約3000名),中学校5校(生徒数は約1500名)の大きくはないが小規模でもない自治体である。

さらに、国際基準として、国際人権規約社会権規約 1976年効力発生、1979年日本は批准)及び子どもの権利に関する条約(Convention on the Rights of the Child 1990年効力発生、日本は1994年批准)がある。前者の13条2項(a)は初等教育の無償、同項(b)中等教育(中学校と高等学校)の漸進的導入を求める。同じく(c)は高等教育の漸進的導入を定めているが、日本は民主党政権下の2012年9月に同条項の留保を撤回した。一方、後者は28条(a)で初等教育、(b)で中等教育の無償化を、(c)で高等教育を利用する機会をについて規定している。ちなみに日本政府は、文科省・外務省を初めとして「児童の権利に関する条約」と称しており、「子ども」の概念を狭める意図を感じる。

 3 教育の無償化のさらなる前進へ向けて

 以上の歴史的、国際的な教育無償化の拡大をふまえて、また、義務教育費国庫負担制度、私学助成制度、高校無償化制度などの政策も視野に入れて、子どもたちに真の無償教育を保障するための財政的措置を検討するために、以下のようことを考えてみた。

2021年度の文科省予算の内で文教関係費は4兆303億円である。一方、文科省の「平成30年度子どもの学習費調査」により、「学校外活動費」を除き「学校教育費」と「学校給食費」の保護者が負担する総額を学校種毎に試算し、その上で「学校教育費+給食費」の総額を試算すると以下(表)のようになる。ただし、公立学校で学ぶとの前提をおき、かつ、子どもの人口の減少は続いているが各学年とも1,000,000人として計算した。

(表)

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校教育費の総額は全学校種の合計額は上記の表に見られるように1,999,170,000,000(1兆9,991億7,000)万円。給食費は幼稚園、小学校、中学校の合計で448,245,000,000(4,482億45000)万円。学校教育費と給食費の総合計は2兆4474億円程度である。

仮に、学校外活動費を除いて、今現在学校で受けている幼稚園教育、義務教育と高校教育に支出する保護者負担を無償とするならば、それに必要な予算は2.4兆円程度と言える。結果、文教関係費は4兆303億円から約6.48兆円程度になると見込まれる。

憲法第26条および子どもの権利条約第28条を活かして、文科省調査にある「学校教育費」と「学校給食費」の合計額2兆4474億円程度の内容を精査して、真に必要な(負担可能な)金額を国で負担する改革案を検討したい。