熊本教育ネットワークユニオン

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秋の歌(2)

秋の歌(2)

    そこには全く違う空気が漂っていた。杉の巨木が十数本、生きてきた歴史を語り合うかのように天高く、そして互いを慮って枝を広げ合っていた。静寂と神秘、そして時間。たまたま訪れた一遊山者には近寄りがたい気高さが溢れているのであった。かつて南郷谷から或いは矢部の村々から、農民や商人が登ってきては同じように、このカルデラ外縁の十字路でしばしの憩いを求めただろう。そんな、消えてしまった歴史に思いを馳せてもみた。
    しかしこの時、私はまだ気づいていなかった。そのような時空の中のあやふやな物思いは、その後に続く二時間半もの陶酔の序曲に過ぎなかったことを。絢爛たる色彩の空間が、峠からほんの一登りしたところに待っていた。楓や山毛欅(ぶな)、水楢、その他夥しい木や草たちが総出で秋の舞台を飾っていた。足下にも目の前にも頭上にも。それは、すべての芸術の源である太陽が、土と水と空気を使って、その万能のパレットから気ままな色を取り出して、自由な空間に塗りつけたに違いなかった。おそらく一年に一度だけの。そして今日は、その偉大な画家が最も心を許した時だったのではなかろうか。木々はなぜ紅葉するかなどと愚かな説明を求めてはならない。専らこの時間と空間に埋没せよ。そしてお前の全ての情感で、この不確かな時の輝きを歌い上げよ。
    すらりと伸びた水楢の木立の下で昼食を取った。谷を吹き上げてくる風が小枝を揺らし、黄金色(こがねいろ)の葉をもぎ取っていった。鳥も獣も姿を見せず、恵みの大地に根を下ろした樹木たちだけが和やかな世界を作っているようだった。


(ネットワークユニオン・S)

 

 

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