冬の領分
今日も縦走路を歩いた。樹林の中の道ゆえにほとんど展望はない。しかし露出した岩石が色んな造形を見せていて、歩くのに飽きるということがない。目も心も癒やされる空間だ。心が何かを歌いそうになる。
山々はまだ冬の領分である。が、ここに雪はない。冬であれば花もない。落ちた木の実を啄むのだろうか、鳥たちが枯れ葉の上でカサカサと音を立てている。風が吹いてきて木々に話しかけると、小枝を揺らして木々が応える。まるでそこにあるのが当たり前であるかのように、或いは己の宿命を受け入れているかのように、何の抗う様子もなく、常緑の木々たちがそこに立つ。明らかにここには冬の詩がある。だが、わが貧弱な想像力では何の寓話も生まれそうになかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
過ぎ来し方を振り返れば
膨大な時の流れがあった
その間この樹は少しだけ枝を広げた
やがてその日がくるだろう
しかしこの樹は更に半世紀
少しずつ枝を広げていくだろう
( 熊本教育ネットワークユニオン S )