また山に入る
無為に毎日を過ごしている訳ではあるまい。目の前に刻々と変化する日本の政治、大きなうねりとなろうとする世界の動きがある。多少の教養人であることを自負する身であれば、これらのことに無関心であることはできない。かと言って、巨大な国を相手に一個人が何を為すことができるだろう。巷で集会に参加する、時にはデモにも参加する。そういう形でしか自己表現ができないのがいかにももどかしい(最近は集会参加も少なくなってしまったが)。
関心を持つということ、それはまた精神に害悪を与えることでもある。今の政治は平和憲法をなし崩しにする動きがやたらと目立つ、しかも巧妙な形で。一旦政治に不信を持ってしまえば、我々庶民はもうファンシウルのような悲劇を演じるほかにないではないか。久しぶりに山に入ってみよう。登山には理由付けなど必要ないのだが、ひょっとしたらそこで清新の気を取り戻すことができるかもしれない。
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また山に入る、今日
小鳥たちはどんな絵を描いてみせるだろう
雲はどんな音色を聞かせてくれるだろう
そして山々は、その嶺の連なりは
どんな踊りを見せてくれるだろう
私が私であることを忘れ
私自身が自然とならなければならない
鳥のように、雲のように、光のように
私自身が自然とならなければならない
陶然と生きるものでなければならない
そして私に与えられた瑞々しさで
この宇宙を観照しなければならない
私が私であることを捨て
私自身が自然となった時
山々は私を迎えてくれるだろう
(この一節は以前にも投稿したことがあります。一部改作。)
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この道を歩くのは2度目である。山麓で果樹農家の夫婦が作業をしているので挨拶を済ませ、竹林の中を登り始めた。道は変わらずよく整備されており、繁茂する灌木類はきちんと始末してあった。豊富な常緑低木の中にシダ類も混じる。ヤブソテツというものを覚えた(帰宅後、図鑑を調べて)。山頂で単独登山者を見かけた以外、誰一人として出会うことがなかった。季節のせいばかりではあるまい。ここは静かな登山者のみが訪れる山であると知った。
この一年が平和でありますように。また心豊かに生きることができますように。
(注)ファンシウル:天性の才能を持つ道化役者。国王の友であったが、謀反のかどで王の怒りを買い、悲壮な死を遂げる。(ボードレール「パリの憂鬱」)
(ネットワークユニオン・S)
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