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西山太吉が語る「秘密保護法~その背景と問題点」②

西山太吉が語る「秘密保護法~その背景と問題点」②

2月26日の朝刊に、西山氏の逝去が報じられた。「沖縄密約とは何だったのか」今一度、当時の講演記録で振り返りたい。

 

<故西山太吉さんの講演要旨>その②(注は筆者)

密約関連文書の廃棄、その量1200トン

 2000年、朝日新聞が1面、2面、3面を割いて琉球大学の報告に基づいて「沖縄密約文書」をスクープしました。翌日、毎日新聞が一面トップでこれを追いかけました。他の新聞は何一つ報道しませんでした。三つの密約文書のすべてが解説付きで報道され、外務省は大慌てしました。新聞社が外務省に殺到するだろうと。これからどんどん外務省に開示請求が来るだろうと心配したのです。なのに、どういう措置をとったかと言うと・・・結局、今回のこの秘密保護法なんていうものを作るのです。その体質は、深く底の底まで沁み込んでいます。当時の河野外務大臣事務次官たちは、吉野(注;密約当時の外務省アメリカ局長)に対して「どんなに電話がかかってきても、どんなに取材があっても、そんなもの(密約)は見たことも聞いたことも無いと返事しなさい」と指示・命令したのです。吉野が認めたのは、6年後の2006年です。もう一つの問題は、沖縄関係を中心に1200トンもあった資料を一挙に一週間で廃棄したことです。国家の情報をできるだけ公開し、理解してもらって、同意を得たものを政策にしていくのが民主主義的フィードバックなのに、逆に情報を全部封殺する。都合の悪い情報はもみ消し、トラック何十台という量になる情報を廃棄するのです。

 民主党政権になって、文書の「欠落調査委員会」(注;いわゆる『密約』に関する有識者委員会;座長 岡田克也外務大臣)が始まりました。しかし、破り捨てた連中が自らを調べるわけですから、犯人が犯人を調査するのと同じで、出てくるはずがありません。我々が大勝利をした東京地裁判決文(注;2010年4月9日)に「自らがやった自らの罪を暴くことは絶対にない。こういうことが日常茶飯事のように行われている」と書いてあります。欠落調査委員会が調査しても何も残っていません。すべてが、廃棄された1200トンの中に入っています。その上に秘密保護法があればすべて闇から闇、何でもできるのです。今回成立した特定秘密保護法の「別表」の中には外交防衛、公安などいろいろ書いてあります。なんでも秘密に出来るのです。先日(2014年7月14日)の「沖縄密約文書不開示」という最高裁判決は、秘密保護法とはこんなに恐ろしいものだということを、先取りして我々に提示したという視点で見なければなりません。

安保体制下、官僚の独善的判断にゆだねられる特定秘密

 日本がこれまで国家機密として最重要視してきたのは何でしょうか。これは、岸信介が1960年に新安保体制を創ってから変わりました。それまでの安保と違って、米国が日本を全部守ってくれる、全部米国に委ねる。だから日本は基地も金も提供すると決めました。それまでは日米同盟と言っても日本の主体性は保障され、日米友好関係を維持することにアクセントがおかれたのです。しかし、新安保体制以降、米国が守ってくれるから「言うことを聞かざるを得ない」というシステムになったのです。その時に、外務官僚が台頭してきました。それまで外務省の発言力は全くなかった。それが、60年安保体制下で「条約局」ができ、日米同盟という圧倒的に対米依存のシステムの中で、外務官僚が猛威をふるう。官僚依存体質がどんどん広がっていきました。

「特定秘密」は外務官僚の中のエリート中のエリートが指定します。防衛省でもそう、エリート防衛官僚がつくる。官僚というのはシステムです。条約あるいは法律が一度がっちりとできると、その中に自分の存在を据える。そして、その機構をどんどん拡充して、発言力を増やしていきます。そういうシステム作りは官僚の得意中の得意なのです。

 ご存じのように、特定秘密を扱う者は、適性検査を受けます。適性検査を受けること自体、基本的人権の侵害です。いい年をして、40歳にも50歳にもなって適性検査を受けるのです。おまえの血統はどういう血統、家系はどんな家系、財産は、友人関係は、大学時代はどういう影響をうけたのか・・・こいつは秘密に向かって邁進するというエリートを選び抜くのです。それまでも外務省内部には「部内秘」があり、言うならば特定秘密なのです。すでにあるものを、今度は機構化する。内部告発だって、日本は全くありません。内部告発しようにも、部内秘で特定のグループしか知らないのですから。これからはエリート部隊、適性検査を受けた官僚たちが自分たちの発想で、自分たちだけの問題意識をもって、これは都合が悪い、これは都合がいい、これは日本の安全保障にとっていいと・・・日本の安全なんて誰が判定するのですか。その時の政権の、自民党政権の基盤を強化する、これが最高秘密なのです。適性検査を受けた官僚が、朝から晩までずっと秘密の指定を行う。一年くらいで交代する大臣はノータッチ。特定秘密を選定して、五年ごとに廃棄期間があるといいますが、延長に延長を重ねていく。最後には永久保存になる。それをチェックするのは事務次官であり審議官です。国会はなにもやらないし、できないのです。秘密保護法の怖さは官僚の独善的思考が全くフリーに機能し、機構化されることです。官僚は終身雇用です。大臣のチェックはありえない。専門の官僚がどんどん特定秘密をつくっていく。そのうち自分たちを守ろうとする。そうなると自分たちの発言力や権力が肥大化する。そういうふうにして秘密国家は出来ていくのです。 (つづく)