短詩二編
(1)
冬の日、厚着をした樹々たちが
大げさに声をあげ体を揺すって
北風と遊んでいた時
その木は静かに立っていた
裸のままで ――
今日、春の光の中で
とっておきの薄衣を持ち出して
涼しく風と遊んでいる
(2)
冬の幻想を、私はもっと歌いたかったのに
そう思って田舎を歩いてみたのに
道端にはもう水色や紫色の小花が咲いて
羊蹄(ぎしぎし)なんぞが、純潔の緑に萌えているではないか
空は一面うす墨を流したようで
しかし雲は高く、遥かに高く
その中に枯れ葉のようにひらひらと
ひばりが舞い、銀の音色をふり落としている
―― ああこの焦立ち、私はどうしよう
凍える空気の中では時が停まっていた
私はあまたの悔恨に陶酔することができた
早春の野に伝説はない
ここから始まる歴史だけが顔を覗かせている
この連鎖するいのちの中を、お前は歩み出せるか
(ネットワークユニオン・S)
ブログ管理者から: 羊蹄は、「ぎしぎし」を漢字の上にふりがなを書く形で記載されていましたが、ブログ管理者の能力の問題から()内記載にしてしまいました。