最後の1000km
無職になって1年余、中国・四国地方を3日間で1000km前後走行する旅を3回した。4回目の今度は石州とも呼ばれる石見(いわみ;島根県西部)を目指した。こんな車での強行旅程は最後だと思って出発した。
世界遺産の石見銀山は、大田市大森にある江戸時代前期にかけて最盛期を迎えた日本最大の銀山であった。銀山公園駐車場の1台だけ空いているところに運良く駐められた。間歩(まぶ)と呼ばれる坑道のうち、龍源寺間歩まで観光車両は入れないため40分ほど歩いた。旧坑道は頭を打ちそうなところがあったが、歩きやすく整備されていた。
引き返して五百羅漢や代官所があった大森の町並みにも行ったので、全部で2時間以上は歩いただろうか。さすがにくたびれて、夜足がつってしまった。最後に少し離れた世界遺産センターで歴史や製錬技術などの展示や映像を観た。
石見銀山には山を挟んで2つのタイプの鉱床があるそうだ。地表近くで採掘しやすかったのは福石鉱床と呼ばれ、マグマ中から発生した熱水が鉱物を溶かし込んで岩石に染みこんでできたという。この坑道跡は複雑な空間が広がっているようだが、代表的な大久保間歩にはガイドを予約しないと入れないそうだ。
後に採掘されるようになったのは永久鉱床と呼ばれ、マグマ中の熱水の温度が下がることにより鉱物が細長く脈状に延びて結晶化したもので、坑道跡は狭いトンネル状になっている。
県立しまね海洋館アクアスは平日だったせいか、駐車している車が少なかった。そのうちに高校生の団体が来たので賑わってきた。シロイルカのショーではバブルリングを観ることができた。リングがなかなか消えないのが不思議であった。
アシカとゴマフアザラシのショーでは2種が比較された。陸上での姿勢の違いは分かりやすい。アシカは腹が床から離れているが、アザラシは腹ばいである。アシカは大きいひれ状前足で羽ばたくように素早く泳ぎ、耳たぶがある。アザラシは後ろ足と身体全体を使って泳ぎ、耳穴だけである。具体的で興味深く観ることができた。
山口県の東端の須佐ホルンフェルスを訪れた。ホルンフェルスは地学の教科書に載っていた。随分昔に授業もしたように思うが、何だったか思い出せない。変成岩の一種で、主に砂岩や泥岩がマグマの熱による接触変成作用を受けたものだという。熱によって硬くなっているので割れると角(ホルン)のようにとがることが名前の由来だそうだ。
授業の関係で大理石は石灰岩が変成作用で結晶化したもので、主成分は炭酸カルシウムであるということはすぐに出てくるが、それ以外の岩石はあやふやである。
台風でもないのに気圧配置のせいか暴風警報が出ていた。雨がポツポツ程度だったが、強烈な風のため傘が差せない。足元が濡れた上に身体が持って行かれそうで怖かったが、黒色と灰白色の縞模様の岩場を観ることができた。
秋吉台近くに別府弁天池はあった。湧き出ている水は底の方が一面鮮やかなコバルトブルーに見える。何とも不思議である。非常に透明度が高いことに加えて、カルシウムなどミネラルにより光の成分が吸収され残って反射したのがこの色だという。晴れていたらもっと鮮明な色だっただろう。
他にも何ヶ所か寄って950km以上を無給油で走破した。山陰の道は通行量が多くないので、一般道でもスムーズに移動できる。ある程度交替はしても、やはり長距離運転はかなりキツくなってきている。散歩や少々筋トレをしていても、無理は利かなくなった。
まだ3つの本四架橋のどれも渡っていないのが心残りではある。遠方にはツアーで行くしかない。それでも九州内を車で廻ることはしていきたい。
(熊本教育ネットワークユニオン true myself)