自然
秋のソネット(わが「山岳手帖」より) (1) いつになく私が寡黙であるわけを 利発な君たちはもう見抜いているだろう 空は限りなく深く光は優しく柔らかい このメルヒェンの世界で私は好んで空想に耽るのだ 瞼を閉じると見え耳を塞ぐと聞こえるもの 真っ赤…
樹林の尾根にて 常々思う。普段スポーツをする人間は山には登らない。山に登る必要を感じないからだ。ひたすら身体を鍛え、技術を磨く。その繰り返しの中から徐々に自分の成長が見えてくる。チームの変化が見えてくる。そのダイナミズムこそがスポーツをする…
台風は居座った 台風10号はスパコンの予想から大きく外れ、どんどん西へ。九州の西を北上するようだ。935hPa、上陸する台風としては最強だと報道される。熊本にとっては最悪の直撃コース。 近所からは、補強のための電動ドライバーなどの音が聞こえた。雨戸…
続・夏の断章 〇もう夕刻も近いのに太陽はなお厳しい光を投げかけてきた。私は光を背にして歩く。すると背中に、いい知れぬ圧力と重力を感じる。ヘリオスの神はこの時期、怒りに燃えているに違いない。黄金の馬車を駆って天空を飛びゆく姿がとてつもなく眩し…
ヒゴタイとスズラン 家の庭の端にヒゴタイが咲いた。ルリ色の球状の花がおもしろい。絶滅危惧類にも指定されており、採取が禁止されているという。我が家の相棒が友人の南小国の義実家にヒゴタイがあるそうだ。その友人からから種をもらって、4年ほど前に蒔…
田園地帯を歩く (1) 今日も野道を歩く。田園地帯では今、おおかた田植えも終わり目路の限り若苗が風に揺れる風景が広がっている。国策の貧困により(※後述)、耕作を放棄する、あるいは農地を手放す農民が全国的に増えているそうだが、日々散歩をするこの…
スーパーマーケットそして凝華 週に2回くらい我が家の相棒に付いて食料品の買い出しに行く。臨採や非常勤のときは休日や授業が無い日には買い物に付き合っていたが、今は毎回である。私が車を運転して行き、カートを押したりし買い物かごを持ったりしている…
野鳥の森にて (1) 登山口で車を停め、ドアを開けるとたちまち野鳥たちの囀りが耳に飛び込んできた。ホオジロやウグイスの澄んだ声が一帯に響きわたっている。中でも大きな反響音を轟かせるのがホトトギスだ。屈託のない大きな声が谷から尾根へ、更に空の…
山々を眺めて楽しむ(その2) (1) レーニア山はアメリカでも有数の高山です。標高は四、〇〇〇メートルを超えます。日本からの移住者はかつて「タコマ富士」と呼んで親しんだそうです。ただし、高いとは言ってもこちらは飛行機の中にいるのだから見下ろ…
山々を眺めて楽しむ(その1) (はじめに) またまた山の話題です。登山やアウトドアに興味のない方には退屈な読み物となりますが、どうぞお付き合いください。山に関する限り、私は今も古い地図や写真、メモなどを大切に残しています。そのメモのひとつを…
河辺の散歩道 (1) 今日も野道を歩く。冬の日光は柔らかさと温かさを届けてくれる。珍しく河口の方へ足を伸ばしてみた。干潟のまわりには野鳥がいっぱい。鴨、鷺、千鳥たちであろうか。蛇行する流れに添うように、遠目に見れば小石でもばら撒かれたかのよ…
岩の上の孤独 汗ばんだシャツを着替え、木立に囲まれた岩の上で質素な弁当を広げた。かすかな寂しさ、侘しさを感じる。一人ぼっちの山歩きは珍しいことではないのに、なぜこんな寂寥感に捕らわれるのだろう。樹林の静寂のせいなのか、それとも晩秋の風のせい…
「日本百名山」私考(その2) (おことわり……前回「その1」の中で、深田久弥は『百名山』を選定するにあたって「高さ」「個性」「品格」を基準にした、という文を書きました。これは間違いでした。正しくは、「品格」「歴史」「個性」で、「付加的条件とし…
「日本百名山」私考(その1) (はじめに) 山に関するエッセイや紀行、詩などをこれまでに何度も本欄に投稿してきました。しかし私のノートにはまだまだ豊富に山の記録が残っています。登山やアウトドアに興味のない方には退屈な文章となりますが、この後…
夏山の賦 (1) 山々は今日も歩いている 日に日に私から遠ざかってゆく 谷や尾根がうたを歌っている やがてそのうたも聞こえなくなるだろう (2) シラビソの森の中で 確かに私は聞いた 樹々の呟きが森全体と協和して 膨らみのある旋律が樹間に満ちている…
ノスタルジア(その4) (1) 話を古墳の出土品に戻すとしよう。宇土市立図書館1階の「郷土資料室」の奥にそのコーナーはあった。刀剣4本と槍の穂3本、丸い鏡が大小3個。そして、おそらく女王(願望と敬意を込めてあえて断定する)の身を飾っていたで…
パラサイト・イヴ 聖美(きよみ)は、誕生日であるクリスマスイヴの夜、必ず夢を見た。そこは暗かった。どこからか低いうなり声が絶え間なく聞こえてきていた。どちらが上でどちらが下なのかもわからない。ゆっくりとした流れが身を包んでいて、それにまかせ…
割引バスカードそしてミミズからあれこれ 先日、熊本市内のバス・市電の割引カードを初めて使った。なかなか使う機会が無く、手に入れてから半年以上経っていた。それまで交通系のカードは持っていた。全国のJR・私鉄・バスなどほとんどの交通機関で使える…
秋の準備 何にもしないうちに6月も最終週になった。先週21日は夏至。午前5時前には薄明るい空も、これから次第に明け難くなってゆき、10月の末からは散歩に懐中電灯が必需品となる。 散歩をしていると、先日まで穂を延ばしていた栗の花が小さなイガと…
わたしたちは食べてそこからエネルギーを得ている。その仕組みは、ぶどう糖(グルコース)を例にとると次のようにまとめられる。 理解第1段 ➡ ぶどう糖などの有機化合物を燃やすと熱(と光)を出すことは知っている。燃えるときエネルギーを出す。ぶどう糖は…
ノスタルジア(その2) (1) 熊本市から国道3号線を南下して宇土市に入る。松原交差点を直進して松山町というところまで来ると、左側にこんもりした山が見えてくる。ここから更に南へ、およそ2キロの山塊がこの文章の舞台である。海抜は最高地点でもわ…
連れあいさんが子供の引っ越しの手伝いといって東京に行ったまま、2週間が経とうとしている。 この間、業務研修会、各種集会、母の見舞いと、忙しく日を過ごしてきた。 いつかは、一人になるか一人にするかわからないが、今週は特に行事もなく、家にいる時…
穏やかな気持ちで 統一自治体選挙後半戦も終わって、心が少しばかり弛緩した4月27日木曜日、いつもより早めに柴犬「小太郎」と午後の散歩に出た。バス停前で横断歩道をわたり、坪井川遊水公園の遊歩道に上がる。ちなみに、坪井川遊水公園にはジャングルジ…
久しぶりに授業をして、初めて授業する教科(「栄養」)です。
風の音を聞く (1) 今日も野道を歩く。川辺ではカラスノエンドウが実を結び始めた。ノアザミは薄紫の蕾を整えて明日にでも開花しそうな勢いである。片や、あれほど隆盛を誇ったシロツメクサにはやや衰えの兆しが見え始めたようだ。糸状の白い小花の生え際…
春景 (1) 咲き急いだことを恥じらいながら、瑠璃色の小花たちが池の畔で震えていた。木々はざわめき、貪欲な黒い鳥さえ、荒立つ波に怖じけて翼をたたんだ。冷酷な冬の使いが、再び氷の刃を見せつけながら、嘲るように野山を駈けて、この光の中のまどろみ…
余寒の森で 樹林の中の彷徨はいつも夢想を誘う。花の春夏、紅黄葉の秋はもとより、余寒のこの時期にあっても木立を仰ぎ落ち葉を踏んでいると、どこからか妖精の声が聞こえてきそうな気がする。 そこに立つ裸の木々や地面いっぱいに広がる朽ちた葉っぱはまぎ…
https://www.facebook.com/KOBAYASHITosio/posts/pfbid0wEa7DAVQtRvXCBe6UqXXiUCk6fZ8JJ7KjSqcP6szvvCbaTnRthjJRib5Gy1eQvsbl 私個人のFacebook に上の投稿を行った。ことの顛末は、岡山に在住の長男夫婦のもとに「帯祝い」(戌の日に安産を祈願する習慣から…
侏儒の呟き(10) 1 認識の欠如、想像力の欠如について。どうして毎日毎日、人類はこんなにも地球をいじめ続けるのだろう。ウクライナの都市は今日も火の玉に巻かれ、空には黒い雲が広がっている。北朝鮮は何発のミサイルを日本海に撃ち込めば気が済むの…
また山に入る 無為に毎日を過ごしている訳ではあるまい。目の前に刻々と変化する日本の政治、大きなうねりとなろうとする世界の動きがある。多少の教養人であることを自負する身であれば、これらのことに無関心であることはできない。かと言って、巨大な国を…