熊本教育ネットワークユニオン

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山々を眺めて楽しむ(その1)

山々を眺めて楽しむ(その1)

 

      (はじめに)

 またまた山の話題です。登山やアウトドアに興味のない方には退屈な読み物となりますが、どうぞお付き合いください。山に関する限り、私は今も古い地図や写真、メモなどを大切に残しています。そのメモのひとつを修正し加筆したものがこの文章です。レクチャー風な言葉遣いに改めました。

 

        (1)

 山は登る時だけが楽しいのではありません。机上で地形図を眺め等高線をたどっている時、心はすでに山の中にあります。下りてきた後、記録を残そうとノートに向かう時、心はまだ山の中にあります。つまり準備から整理までがすべて山の楽しみなのです。旅の本を読んでも同じことが書いてあります。「計画を立てる段階からもう旅は始まっている」と。だから、もし下調べやら事前の学習をすることなしに旅に出たら、面白味は半減ということになります。もしおさらいをすることがないならば、その場合にも同様です。旅先の印象は薄く、長く記憶にとどまることはないでしょう。山登りも旅の一つでしょうから、共通するのは当然と言えます。

 そのような本来の山の楽しみ方のほかに、山を眺めるというのも私にとっては大きな楽しみなのです。副次的な楽しみと言ってもいいかもしれません。いろんな事情で山から遠ざかっている時には特に、この副次的な楽しみが有効です。一時的とはいえ、欲求不満が解消されるように感じます。高い山に登った時、遥か彼方に更に高い山々が見えるのも愉快だけれど、ここでいう「眺める」とは、平地から眺めることをいうのです。仕事であれ買い物であれ、外に出ればいつも山を眺める。その稜線を目で辿ってゆく。私の生活範囲にもたくさんの山があるので、眺めざるを得ないのです。「そんなことをしているのは別にお前だけではないよ」と言われるかもしれません。人はみんな山を眺めるものだ。特にその山が紅葉で燃えていたり、雪をかぶって前山の上にすっくと立っていたりすると、誰だって感動を覚えるものだ、と。ところがたいていの人にとってはそういう特別の山だけでしょう。私の場合は、いつでも、どこでも、なのです。意識的に眺めるのです。なぜ、と問われれば、山が好きだからと答える以外にない。あるいは、稜線が美しいから、と答えるかもしれません。

 

        (2)

 日本ほど山の名画が多い国は世界にないでしょう。西洋にも山は描かれているかもしれないけれど、それは宗教画や歴史画、人物画の背景としてであって、山そのものがテーマとはなっていません。ヨーロッパは平地が多いので、その地形が関係しているであろうことは容易に想像できます。対して日本は山岳大国です。どこに住んでいても近景、遠景に必ず山が入ってきます。山は生活や信仰とも深くかかわったので、当然絵画の対象ともなったわけです。山を眺める、見つめるという行為は、まさしく日本人的な行為であると断言してもいいのではないでしょうか。

    

        (3)

 かつて大阪発新潟行きの飛行機に乗ったことがあります。周りの乗客は新聞や週刊誌を読むか、イヤホーンを耳に当てて音楽を聴くかのどちらかでした。ところが私は胸が高鳴り、気が気でなかったのです。木曽御嶽や北アルプスが、あるいは妙高連山が見えるのではないかと、右を見たり左を見たり、とにかくそわそわしていました。あいにく雲の多い日で、その切れ間から盆地を流れる千曲川が見えるにすぎませんでした。期待外れのまま、飛行機は新潟空港に着いてしまいました。(※)

 ついでに外国の山についても触れておきましょう。もう三十五年も前のことになりますが、初めてアメリカへ旅行をしました。観光を兼ねたアメリカ教育事情視察の旅で、十数人のグループと一緒でした。最初の訪問地はロサンジェルス。飛行機は夕刻に成田を発ちました。すぐに海の上に出るので景色には何の変化もなく、楽しみといえば客室乗務員(当時はスチュワーデスという呼称)が回ってくるのを待つことぐらいでした。しばらくすると暗くなります。ところがさらに二時間ほどすると、もう夜が明けようとしていました。私にとって初めて経験する奇妙な現象でした。どのくらい眠ったのかよくわかりません。が、窓の下を見るといつも太平洋でした。相当な時間が経って、やっと陸地が見えてきました。あゝ、あれがアメリカ大陸か!心の中で秘かな感動が湧くのを抑えきれませんでした。ところが飛行機はすぐに着陸することはせず、いつまでも似たような風景の中を飛んでいます。今でもよく分かりませんが、どうやら海岸線に沿ってカナダ側から南下していたようです。やがて前方左側に、丸い頂を持ったひときわ高い山が見えてきました。「マウント・レーニアだ!」即座にそう思いました。写真で見たものとそっくりだったのです。(続く)

 

(※)帰路は新潟発関西空港行きに乗りました。飛行機は日本海上に出て、何と佐渡島の上空を通過してゆくのです。眼下に、地図帳で見たあの佐渡島が、中央部がくびれた変形平行四辺形の姿で見下ろせて、一人で歓喜に浸っておりました。                     

                       ~~オウシャン・セイリング~~

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レーニア山 シアトルから