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2015交渉の要求の背景を解説します(その1) 1 採用時における労働条件の明示をより明確におこなうこと( 中)

昨日のアクセス数は過去最大12人もの方が来てくださりました。感激し、良い記事を書かなければと重圧を感じつつキーをたたいています。

次はどなたかが意見を寄せられれば励みになります。

さて昨日の続きです。

 

2015交渉の要求の背景を解説します(その1) 1 採用時における労働条件の明示をより明確におこなうこと(中)

 

総務省自治行政局公務員部長が発した「 臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等について」(総 行 公 第59 号 平成26年7月4日)の<別紙> 「臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等について」の「 Ⅰ 臨時・非常勤職員の任用等について」から昨日引用しましたがその

特に任期については、後述の任期に関する考え方も踏まえ、任期終 了後の再度の任用の可能性について明示する場合であっても、手続な く「更新」がなされたり、長期にわたって継続して勤務できるといっ た誤解を招かないよう、明確な説明に留意すべきである。

 

のくだりに注目しましょう。

後述の任期に関する考え方とは、こうなっています。

③ 任期について ア 臨時的任用職員の任期については、地公法第 22 条において、最長 1 年以内と規定されている。 一方、特別職非常勤職員及び一般職非常勤職員については、法律 上任期に関する明文の規定はないが、期間を限って任用する非常勤 職員の任期については、 (ア)臨時的任用が最長 1 年以内であり、「臨時の職」はおおむね 1 年 以内の存続期間を有するものとされていること、 (イ)臨時・非常勤の職が臨時的・補助的業務に従事するという性格 であること、 (ウ)職の臨時性、補助性に伴い基本的に毎年度の予算で職の設置に ついて査定され定員管理上も条例で定める定数の対象外であるこ と にかんがみれば、原則 1 年以内であると考えられる。 なお、この場合であっても、平等取扱いの原則や成績主義の下、 客観的な能力の実証を経て再度任用されることはありうるものであ る。 イ 具体的な任期の設定にあたっては、任用されていない者が事実上 業務に従事することのないよう、あくまで職員に従事させようとす る業務の遂行に必要な期間を考慮して適切に定めることが必要であ る。 ウ 任期については、②のとおり任用の際に文書で示す必要があるが、 その際、(2)①と同様、手続なく「更新」がなされたり、長期にわ たって継続して勤務できるといった誤解を招かないよう、採用の段 階で明確に示すべきである。(アンダーラインは筆者(ブログ筆者=私))

つまり「1年、2年、3年と連続して雇ってもいいです。しかし、必ず雇えるものと思わせないようにしなさい」ということです。

こんなことなぜ書くのでしょうか。

この文書(「 臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等について」(総 行 公 第59 号 平成26年7月4日))の最初の部分に

臨時・非常勤職員の任用等については、平成21年4月24日付総務省自治 行政局公務員部公務員課長・給与能率推進室長通知「臨時・非常勤職員及び任 期付短時間勤務職員の任用等について」(総行公第26号)(以下「21年通知」 という。)において、任用の際の勤務条件の明示及び休暇その他の勤務条件に関 して留意すべき事項等について示したところです。各地方公共団体においては、 これを踏まえ、臨時・非常勤職員の任用等に係る取扱いについて必要な対応を 図っていただいているところですが、総務省が行った調査では臨時・非常勤職 員が増加傾向にある一方、21年通知の趣旨が未だ必ずしも徹底されていない 実態が見受けられ、また、臨時・非常勤職員の任用等に関連する裁判例や法令 改正などの新たな動きも生じています。 このような事情を踏まえ、臨時・非常勤職員や任期付職員の任用等について、 制度の趣旨、勤務の内容に応じた任用・勤務条件が確保できるよう、別紙のと おり、改めて留意すべき事項に関し考え方を取りまとめました。

とあります。

私の意訳では、「前々から言ってたことが、調査を見るとどうも徹底してないようです。裁判で負けたりしています。そこでもう一度別紙をだしました。」と読めます。

 

「必ず雇えるものと思わせないようにしなさい」とは、

「東京高裁平成 18 年(ネ)大 3453 号・平成 19 年 11 月 28 日判決」

地方公務員法3条3項3 号に基づく非常勤保育士に係る地位確認等請求事件)での

・ 採用担当者において、長期の職務従事の継続を期待するような言動を示していたこと、 一審原告らの職務内容が常勤保育士と変わらず継続性が求められること、それぞれ 9 回 から 11 回と多数回に及ぶ再任用がされ結果的に職務の継続が 10 年前後という長期間に 及んだが、再任用が形式的でしかなく、実質的には当然のように継続していたことから、 一審原告らが再任用を期待することが無理からぬものと見られる行為を一審被告におい てしたという特別な事情があったものと認められる。

・ 一審原告らが再任用されるとの期待は、法的保護に値するべきで、一審被告は一審原 告らを再任用せず、一審原告らの期待権を侵害したのであるから、一審被告は、一審原 告らに対して、その期待権を侵害したことによる侵害を賠償する義務を負うべきである。

この様な判決が出ているからです。

 

 

もっとも、裁判判例は雇用関係の確認については働く者に厳しいものも多く、「最高裁平成元年(オ)第 1310 号・平成元年 12 月 11 日判決」(地方公務員法3条3項3 号に基づく臨時嘱託員に係る雇用関係確認等請求事件)は敗訴しています。

・原審の判断を正当として是認し、上告棄却

(1)本件契約の性質について ・ 「勤務実態のほか、原告と被告町が本件契約を締結するに至った経緯及び仕事の内容 等を総合すれば、原告と被告町の関係は雇用の実質を有するものであるが、地方公務員 法は、その成立の沿革及び国家公務員法との対比から私法上の雇用契約の締結を禁止し ていると解されるから、原告は地方公務員法 3 条 3 項 3 号の特別職たる「臨時嘱託員」 として資料館の事務に従事していたものと認めるのが相当」とした一審を維持

(2)地方公務員たる身分の喪失について ・ 本件契約は、地方公務員法 3 条 3 項 3 号の特別職である臨時の職員として任用するこ とを前提として締結されたものということができるから、これを期間の定めのないもの とすることは、同法 17 条ないし 22 条所定の一般職公務員の任用における規制を事実上 無に帰することになり、許されない。 ・ 地方公務員法 3 条 3 項 3 号により期限付で臨時嘱託員として採用された特別職たる公 務員は、引き続きあらたな任用がなされない限り任用期間の満了により当然にその地位 を失うと解されるから、一般私法上の労働契約と同視して更新されることを前提とする 控訴人の主張は失当として採用することはできない。

というものです。