会計年度任用職員制度をめぐって
会計年度任用職員って知ってますか。変な名前の制度が2020年から学校をはじめ公務員に導入されます。非正規公務員への大きな制度変更になります。
熊本県の県立学校では非常勤講師は現在、地方公務員法3条3項の3を根拠に任用されていますが、2020年度から会計年度任用職員に移行します。これは名前が変わるだけではありません。
増加する臨時・非常勤職員はその劣悪な待遇から官製ワーキングプアとも呼ばれています。国会では2016年吉川元議員(社民)が衆議院総務委員会で同一労働同一賃金に関連し、公務員を放置するのかと安倍首相に法改正をせまります。首相は適切な時期に実態調査に取組み状況のフォローアップを行なう旨を回答します。国が調査をすると、その後「研究会」をつくります。総務省は「地方公務員の臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会」を立ち上げました。それが、今回の地方自治法・地方公務員法の改正に繫がるわけです。
実はこれまで総務省も何もしていなかったわけではありません。非正規地方公務員の数は2005年に45万、2008年では50万(、2012年で60万)と増え続けます。2009年には地方公務員の短時間勤務の在り方に関する研究会が報告、続き4月に総務省は課長通知を出します。
それより以前2006年には裁判で中野区非常勤保育士に公務員にも期待権(来年も私は雇われるという期待)があることを認められました。
そこで各自治体は2009年の課長通知を「国は長く働かせるな(期待権を抱かさせるな)と言っている」というメッセージと理解します。
その後司法の場では東村山市、茨木市、枚方市では非常勤者を常勤みたいに働かせた場合はその人は常勤者の待遇にしなさい(2008年)、東京都消費生活相談員(非常勤)の組合に対する団体交渉拒否は不当労働行為です(2015年)、大阪教育合同労組には労組法適用者(非常勤講師)を含む組合<混合組合)の労組法適用労働者の労組法上の権利(団体交渉)は保障されます(2915年)という判決が出ます。このような労働者・労働組合の取組みで国は追い詰められ、改革待ったなしの状況が出てきていました。同時に団結権だけでなく団体交渉権(労働協約締結権)を持つ公務員労組の存在を疎ましく思っていたことは想像に難くありません。
そこで2014年総務省は公務員部長通知を出し、空白期間は不要、更新制限は不要、昇格は可能を通知し労働法制遵守を徹底させようとします。しかし、地方の反応は鈍く地方公務員の労働環境の改善が進まない中、安倍首相の意向で政府は民間での働き方改革=同一労働同一賃金を打ち出します。そこで2016年の吉川元の国会追及になるのです。
さらに、首相の諮問機関「働き方改革実現会議」では経団連榊原会長から「公務員も議論に加える提案」(わかりやすく書くと「民間に要求する公務員の世界はどうなってるの?」と言うことです)までされてしまいます(第1回会議:2016年9月27日)。すでに議論を始めていた総務省の「地方公務員の臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会」は9月26日(第5回)から開店休業し(9月26日は自治労・日教組からのヒアリングがあっています)、次の12月5日(第6回)に民間に追いつくべく方針(地方公務員の非正規待遇改善は民間の二周遅れ(国公が一周遅れ)を何とか1周遅れまで取り戻すという方針)を出すに至ります。制度変更概要は(http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei11_02000071.html
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この地方自治法・地方公務員法改正からおこなわれる制度改革にはもう一つ大きな問題があることを知っておかなければなりません。現在の非常勤講師は地公法適用除外であるが故に労働基本権とりわけ労働協約締結権を持っています。今回の制度はその権利が剥奪するというものです。改革に乗じて地公法3条3項3号適用の非常勤講師や消費生活相談員や一部自治体の保育士が所属する組合から労働基本権のうち団体交渉権、団体行動権の2つを剥奪することを狙ったものといえます。そのことは、今回の改革が進むにつれ、この改革が実質的に「特別職問題」になっていることから容易に想像できます。
「一般職になった!期末手当・退職金が出る!」と喜んでいる場合ではなさそうです。今からの取り組みが肝心です。
熊本教育ネットワークユニオンは県教委に要求書(9月1日付けユニオン通信に記載)を提出し10月3日に団体交渉を行います。
皆さんのご意見をお待ちしています。