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熊本教育ネットワークユニオン

活動の報告と相談の窓口です。またブログ担当者の学習の跡でもあります。過去の記事をご覧になるときは下のメニュー欄をクリックください

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トルコ情勢について

国内外情勢

トルコ情勢について

12月19日トルコのアンカラの芸術センターで写真展の開会式に出席していたロシア大使アンドレイ・カルロフ氏が撃たれて死亡しました。男は警察官でその場で射殺されたと報道されました。

また、つい最近でしたか、クーデター事件もありました。

何やらきな臭いトルコ情勢。

トルコといえば、明治のはじめのオスマントルコエルトゥールル号遭難事件もきっかけになり親日国として知られている程度のことが私の知りうる知識。

タララララン、タラララランのモーツアルトトルコ行進曲は好きな曲です。

一方、ロシアとの関係でいえば、国境地帯での戦闘機撃墜・墜落事件もあり、事故ではなく確信犯的なものだとの解説報道もありました。

 

トルコ情勢についてなんとなく気になっていたところ、月刊社会民主11月号(2016年11月)に「トルコ共和国」はどこへ行くか―イスラム主義と揺らぐ国民統合(明治大学政治経済学部 佐原徹哉さん)の論文(編集部で口述をまとめたもの)を見つけました。箇条書きで要約します。

トルコ共和国は1923年の建国以来、①厳格な政教分離を掲げた「世俗主義と②トルコ人は民族や宗教によって分けられないとする「国民の一体性」を国是としている。

エルドアン政権の与党:公正発展党(AKP)2001年発足のイスラム主義政党。2002年の総選挙で勝利し、エルドアン政権成立。

・AKPは親米・親西欧保守の中道右派も取り込んだ=イスラム主義者(都市貧困層、地方の下層が勢力基盤)と新自由主義者中道右派:世俗主義トルコ共和国近代化・繁栄の恩恵→規制緩和・国際化を進めたい)の連合で成り立つたつ=矛盾をはらむもの

エルドアン政権はなんとか経済成長の局面が幸いしバランスをとり、経済成長の恩恵を下層にいきわたらせた(公共事業による有効需要の創出→内需拡大)。

・矛盾は次第に広がる→表面化する=ゲジ公園事件(2013年)

http://tokuhain.arukikata.co.jp/istanbul/2013/06/post_442.html

公園再開発への抵抗運動(イスラム主義押し付けに反対の若者が主体、かつ公共事業を中心とした乱開発への抗議)。この抵抗運動をエルドアンイスラム主義者を扇動しつぶす。

・そのことを「トルコ社会の統合の崩壊の危機を抱いた」のは「ギュレン運動」の勢力。

 

・ギュレン運動は親米・反共を重視し、親米勢力やアメリカとパイプを築く。

・ギュレン運動は、戦略的にトルコのエスタブリッシュメントに食い込む=学習塾の運営=人材育成=国家機構に送り込む=商工会議所、警察、官庁(特に教育省)、さらに軍にも次第に浸透。=各組織の中堅テクノラートにギュレン派活動家の存在。

・ギュレンは1999年アメリカに移住

・AKPの政権成立時はそれを支えた勢力。

・ゲジ公園事件以降ギュレン派はエルドアンの政治(イスラム主義に過剰に偏ること、米国との関係悪化)に危機感を抱く。

・2013年12月エルドアン側近のスキャンダルを暴き、傘下マスコミを使い報道。=エルドアン―ギュレンの権力抗争

・背景にシリア問題もある

・2015年6月総選挙でエルドアン勝利。

・2016年7月トルコ軍の一部でのクーデター:1日で鎮圧。エルドアンは首謀者は政敵クーラー・ギュレンとし、米国に引き渡しを要求。非常事態宣言(憲法に定められた規定:大統領が法律と同等の効力の政令を発することができ、基本的人権も制限)1ヶ月で4万人以上を拘束し、約8万人の公務員を解任・停職処分。エルドアンは「ギュレン派は「国家内国家」をつくる陰謀団体」と宣伝。=クーデターは好都合だった。左翼、クルド勢力もギュレン派とし弾圧されている。

トルコと米国ネオコン勢力は当初良好=AKP政権は中東に新自由主義を広めるモデル。しかし、エルドアンイスラエルサウジアラビアとの関係を悪化させ、米ネオコンはAKPからエルドアンを排除させようとしたのではないか。

・クーデターが失敗した現在かえってエルドアンは安定した。ロシアと関係改善を測ったり、わざと対米関係を悪化させ、米国脅しをしている。

エルドアンの政権の盤石さはトルコ社会の統合にほころびを広げる。①クルド人勢力との関係②サラフィー派(イスラム急進主義)の台頭。さらに「イスラム国」の画策もある。

・今回のトルコ社会の揺らぎは、AKPが世俗主義に替えてイスラム主義で統合しようとした結果。

・当面は表面的に安定。複雑な構図の内戦その泥沼化が懸念される。

この論文はトルコ情勢がよく解説してあるばかりか、現代国際政治の状況考えたり国内政治(憲法問題)を考えたりするのに好適なものだと思いました。ご一読をお勧めいたします。

 また、多民族国家の取組みを学ぶにはマレーシアの歴史も参考になります。