熊本教育ネットワークユニオン

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喜んで生きるために人は生まれた(「加藤一二三 日めくりカレンダー「1日」の言葉)

喜んで生きるために人は生まれた(「加藤一二三 日めくりカレンダー「1日」の言葉)

▲私は長い間、「自分が死んだら、広大で音もない孤独な空間を、何万年も何億年も永遠に墜ちていくのだ」と考え、永遠の孤独には耐えられないという恐怖を感じていた。▲太宰治の「人間失格」を読むと誰でも自殺を考えると言われたが、「自殺」は折に触れて頭をよぎる最後の手段ではある(「自殺を口にする者は自殺しない」と言われたり、新人教員の頃、先輩教師から「結婚すっと自殺する自由もなかっばい」と言われたりした)。▲神田沙也加さんが亡くなった。彼女のファンだったわけではないが、私はミュージカル「マイフェアレディ」の大ファン。高校時代、定期考査が終わると帰宅途中で市電を降り、よく映画館に行った。オードリーヘップバーンの「マイフェアレディ」はそんな状況で観て、その足でサウンドトラックを購入しに松本レコードに行った。当時「ウエストサイドストーリー」や「サウンドオブミュージック」など何度も観てミュージカルの大ファンになった。▲「マイフェアレディ」の中でも、冒頭、「イライザ」が市場で歌う「Would’nt it be loverly」は私のお気に入りだが、神田さんが歌う姿をテレビが幾度も流した。映画の「イライザ」は、もっと顔に煤(スス)がメイクしてあったが、神田さんの澄み切った笑顔そして歌声は、彼女のミュージカル女優としての力量を遺憾なく示しているようだった。私はYouTubeを開いて、久しぶりに「踊り明かそう(I could have danced all night)」「スペインの雨(Rain in Spain)」などを視聴した。▲神田さんが逝った前日には、大坂北新地のクリニックで大量殺人事件が、そして数日後には三名の死刑が執行された。「自死」、「大量殺人(殺人罪)」、「死刑執行(遵法殺人)」・・・「死」とは何か、考えさせられる数日だった。▲神田沙也加さんはホテルの高層階から14階屋外スペースの「真っ白な雪」の上に落下したという。ゆっくりと落ちてゆく姿と、彼女の上に降り注ぐ雪がイメージされ、彼女の生き様を象徴しているように感じた。▲私の半分の年齢で命を絶った神田沙也加さんの冥福を祈らずにはいられない。

(とらうと)