熊本教育ネットワークユニオン

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授業通信から

久しぶりの授業で張り切りすぎ・・・。続かなさそう・・・。

 授業通信を出している。生徒の感想を書き、私が答える形。生徒の文を掲載せず、私のコメントの部分をあげます。

テーマ 炭水化物の世界 2年(栄養)

 サトウキビ(甘蔗:かんしょ)は古代から世界中で特に暑い地域で甘味源として知られていました。その後ヨーロッパでは「てんさい」(甜菜:サトウダイコン)が栽培されます。ともに結晶が同じであり、固体から溶ける温度(融点)が同じであり、同じものです(砂糖=スクロース・しょ糖)。

 ドイツの化学者マルグラフは1747年にてんさいから混じり物の無い一種の砂糖を抽出することに成功します。そして1799年には、マルグラフの弟子アハルドが完全な形でてんさいから砂糖を製造することに成功しました。

 また、マルグラフはてんさいの搾りかすから別の糖を見つけます。この糖は後にフランスのプルースト(1754-1826)がブドウから見つけた(1806年)糖と同じであることが分かり、ブドウ糖と名付けられました。これは蜂蜜からも得られました。これがグルコースブドウ糖)の発見です。

 ドイツの化学者エミール・フィッシャー(1852- 1919)はグルコース分子の構造と特性を研究し、1902 年にノーベル化学賞を受賞しました。

 ところで、左は世界ではどこでどれくらい「てんさい」が栽培されているかのデータ―です。1位と2位はロシアとウクライナです。人類のために平和が大切だということが良くわかります。

 また少し、歴史的なことを書きますが、ドイツ系ロシア人のキルヒホッフ(1764-1833)はでんぷんと希硫酸を加熱するとブドウ糖が出来ることを発見します(1811年)。そして1819年にはフランスでアンリ・プラコーノ(1780-1856)が今度はセルロースを希硫酸と煮てやはりブドウ糖が出来ることを発見しました。なんかすごいと思いません。このころ日本は江戸時代末期でした。シーボルトはまだ来ていません。

テーマ「消化吸収率・排泄」(3年「栄養」

腸内細菌についての「胃で殺菌されても最後まで生きている菌はすごい」というこの疑問から、「腸内細菌はどこから来るのか?」と私に聞かれている気がしました。 調べてみると、このことはまだ未解明なところが多いようです。東京大学の平山和宏氏(「腸内細菌の基礎」モダンメディア60巻10号307-311(2014年))によると、「新生児は産道を通過するとき母親から菌を受け継ぐと考えられる」とあります。「授乳などを介して母親から菌を受け継ぎ、周囲も環境から受け取る菌も重要な要素」ともあります(新聞社の解説記事もあります(解説者は辨野義己(べんのよしみ)さん(国立研究開発法人理化学研究所)https://www.asahi.com/relife/article/14560519)。

さらに最近の研究では母子伝播だけでなく浴槽水を介しての家族間の細菌叢の伝播も報告されています(https://www.morinagamilk.co.jp/release/newsentry-3103.html)。なんとも興味深い話ですね。

また、化学企業のWeb Site に(https://unichemy.co.jp/unilab/unilab-2683/ ) 腸内細菌の割合等がありました。右に図を引用させていただきました。図の中の善玉菌とは消化吸収の補助や免疫刺激など、健康維持や老化防止などへ影響がある菌です。代表的な菌にはビフィズス菌や乳酸菌があります。

 反対に悪玉菌はからだに悪い影響を及ぼすとされ、代表的な菌にはウェルシュ菌ブドウ球菌大腸菌の有毒株があります。

 また日和見菌は健康なときはおとなしくしているが、からだが弱ったりすると腸内で悪い働きをする(日和見感染症の発症)菌で、代表的なものにバクテロイデス・大腸菌(無毒株)・連鎖球菌があります。

便の色が授業で取りあげましたが、尿の色についての質問(「尿の色は食事内容によって変わるのでしょうか?」)がありました。尿の色が黄色なのは、赤血球のヘモグロビンが壊れるとビリルビンが原因です。このことは便の色(ステルコビリン)で学びました。ビルビリンは腸内細菌でウロビリノーゲンになることもあるのですが、これが腸管から再吸収されて尿中に排泄される色です。尿の色の濃さは、同時に排泄される水分の量によります。便の色も尿の色も元は同じビリルビンでした。

腸内細菌叢のことを研究している方々の中では「ヒトはヒトゲノムとマイクロバイオームからなる超生命体」とまで言われています

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs1983/37/2/37_2_157/_article/-char/ja/)。