故きを温ねて怒りを新たにする(その3)
~新聞スクラップより~
(1)
読者の皆様へ。再びテスト問題のようで恐縮ですが、新聞記事の次の見出しは何という法案を述べたものでしょうか。また副題の( )にはどんな言葉が入りますか。当時を思い出してみてください。
『話し合い』処罰の恐れ~(副題)( )、問題点置き去り~
正解は「特定秘密保護法案」、( )に入る言葉は「共謀罪」です。(2013年11月20日、熊本日日新聞)。2013年から14年にかけて、第2次アベ政権が誕生して間もない頃のことでした。法案は12月に参議院の特別委員会で強行採決されます。「見せしめにも恐喝にも使える。どこまで拡大解釈されるかは、(政府の)さじ加減一つ。」「政府にとって都合の悪いことをしたり、考えたり、話し合ったり。それだけで網にかけることは可能。私たちの精神生活や思想の自由にも介入できる。」国会前の反対集会で訴える落合恵子さんの不安がこの悪法の本質を語っていると思われるので、怒りとともに紹介しておきます。
(2)
ところがその翌年には何とアベ政権は、「集団的自衛権」容認を閣議だけで決定するという暴挙に走ります。歴代内閣がずっと憲法違反だとしてきたものを、一内閣だけの「解釈」で、国会(すなわち国民の声)に諮ることなく、しかも内閣法制局長官の首をすげかえてまでやってしまったのです。民主主義の完全なる破壊です。アベ独裁政治がいよいよ本領を発揮し始める、その始まりだったかもしれません。関連する記事や論評が連日、あらゆる紙面を賑わしました。一国民として、私も関心を持たざるをえませんでした。これ以後、わがスクラップブックは全4冊にわたり「安全保障法案」というタイトルになりました。書籍4冊に匹敵します。今読み返しても無性に腹が立ちます。彼の政治手法は、日本の憲政の歴史に泥を塗る行為だったのではないでしょうか。素人ながら、私はそう思います。またこんな政権が長期間のさばっていたということ、それを可能としたこと、それは明らかに私たちの間違いであったとも思います。
国会を軽視する、国民の声に耳を傾けない、何ら説明をしない。悲しいかな、この姿勢はそのまま岸田政権に引き継がれてしまいました。
(3)
現在の岸田政権がやっていること。武器輸出、敵基地攻撃能力の整備、先島諸島のミサイル基地化、南西諸島および九州地方の軍事要塞化、外国との戦闘機の共同開発、膨大な防衛(軍事)予算の拡張、……。そして何よりも、自衛隊と米軍との一体化。私はアジア諸国の目を想像します。これらの動きが彼らにはどう映るのか。おそらくグレイゾーンから限りなく危険なゾーンへと踏み込んでいると、そのように映るのではないでしょうか。「9条の精神を忘れるな」「平和憲法の原点に返れ」という論評や読者の声が今でも頻繁に見られます。一方で、「自衛隊を憲法に明記せよ」という感情的な、あるいは無思慮な声がテレビで流されたりします。今のところ鳴りを潜めている改憲勢力も、政局が変われば活発に動き出すことは間違いないでしょう。
元イスラエル軍兵士・ダニーさんの言葉を学びました。「『帰還不能点』に近づけば近づくほど(戦争反対の)声を上げにくくなる。だから今、声を上げるべきだ。」(ユニオン通信7月13日号より転載)。
~オウシャン・セイリング~