「さん」と「こそあど」
日本シリーズの優勝が決まってすぐに、チャンネルを変えた。時々観る各県の特色を出し合うバラエティ番組で、丁度熊本の話になっていた。熊本弁では「右に行く」ことを「右さん行く」と言う。方向を表す「~に」を「~さん」にするということが取り上げられていた。
たしかに聞いたり言ってもきたが、熊本独自なんて意識したことはなかった。九州の方言は似ているところもあるので、なんだか他県でも言いそうな気もするのだが。
番組の中で、繁華街を歩く熊本県民は名前などにつける敬称ではないと答えていた。他県民の中には、丁寧な言葉遣いと思われる方もおられるかもしれない。
フリップに書いてある方向を表す言葉に「さん」をつけるかを聞いていた。前/後、上/下、斜め、まっすぐ、近く/遠く、手前/奥、こっち/あっち、内/外、端、隣、向こう、東西南北などである。
この中で「まっすぐ」だけは、「さん」はつけないと答えていた。「後さん下がる」「斜めさん進む」「端さん寄る」など、「まっすぐ」以外は「~に」を「~さん」にしてもしっくりくる。「まっすぐさん」には違和感がある。言うとするなら、「まっすぐん(の)方さん」だろう。「斜めさん」は「斜めん方さん」でも良いだろう。この違いは何なのだろうか。
番組では、語源をこう説明していた。平安時代には「辺り」を「様(さま)」と言っており、「右の方に」「左の方に」を「右様に」「左様に」と言っていた。熊本では「右様に」が「右さんに」、そして「右さん」に変わっていったと説明していた。
吉幾三が作詞作曲した「おら東京さ行くだ」の「さ」も同様の語源だということも出た。津軽弁にも古語の表現が残っているのだろう。この曲名を熊本弁で言うと、「おっは(おるは)東京さん行くばい」とでもなるのだろうか。
熊本出身のゲストが、「あっちゃん」「こっちゃん」「どっちゃん」と「ちゃん」付けもあると言っていた。これは、「あっちに」は「あっちさん」で、発音しやすく「あっちゃん」になったものだと思う。
熊本弁は天草弁や球磨弁など地域によっても違いがあるが、古語の表現や文法が多く残っていると聞く。調べてみると、驚く「たまがる」、戸を閉める「あとぜき」、精を出す「がまだす」、可愛い「むぞらしか」なども古語からきているという。他にも多くあるようだ。
見えるを「見ゆる」、聞こえるを「聞こゆる」などと言うのは古典文法だそうだ。寝るを「ぬる(ぬっ)」、出るを「づる(づっ)」と発音するのを聞いたことがあるが、これも古語なのだろうか。
指示語である「こ・そ・あ・ど」にも、熊本弁は独特のものがあると思う。「こんな・そんな・あんな・どんな」は「こぎゃん・そぎゃん・あぎゃん・どぎゃん」と言う。「この・その・あの・どの」は「こん・そん・あん・どん」、「これを・それを・あれを・どれを」は「こっば・そっば・あっば・どっば」などもある。
他県でも地域によって違いがあるはずだが、長崎や佐賀では「こがん・そがん・あがん・どがん」が主のようだ。福岡では「こげん・そげん・あげん・どげん」のようだ。そして、鹿児島でも「こげん・・・・」だそうだ。「こがん・・・・」や「こげん・・・・」は熊本県内でも聞くことがあるように思う。
宮崎では「こんげ・そんげ・あんげ・どんげ」で、大分辺りでも使われているという。福岡と鹿児島の方言自体は大きく違っているが、熊本・大分・宮崎を挟んで「こ・そ・あ・ど」に同じものがあるのは何だか面白い。
東国原元宮崎県知事の言葉「どげんかせんといかん」は全国的に有名になったが、旧薩摩藩領の都城出身で鹿児島弁に近いという。宮崎の南部以外では「どんげか・・・・」だそうだ。
花園インターチェンジ(IC)―池上熊本駅IC]間が先月開通した無料の自動車専用道路「熊本西環状道路」を通ってみた。池上から下硯川まで、すぐに着いた。帰りも熊本駅までスムーズだった。熊本の渋滞状況からすると良いことであろう。トンネルや高架橋がとにかく多いので、長い工事期間と多額の工事費がかかるはずである。
道路が便利になって車の利用が増えると、バスなどの公共交通機関がますます衰退するのではないかとも思ってしまう。夕方散歩したとき、路線バスに出くわすことがある。運転手不足ですでに減便になっているが、乗客が少ない便ばかりである。乗客無しの便もある。普段車ばかり使っているのに勝手だが、運転しなくなったときに路線バスがどうなっているのか不安もある。
(熊本教育ネットワークユニオン true myself)
