前回に引き続きに日教組九州地区協議会組織運動交流集会報告リポートの一部(つづき(その5/最終回))を掲載します
7 きちんと現場で労働協約が履行されているか
県教委は、年度末から新年度にかけ、新年度からの非常勤講師の取り扱いについて通知文を出し、19年前に出した通知を廃止し、私たちとの交渉で決めたことを、「県立学校非常勤講師の報酬対象業務範囲に係る整理表」等としてまとめ校長を指導した。
また、勤務条件通知書を文書で本人に示した(2016年4月)。これは従前より行っていることだが、各校で説明があったこと・説明をしたことを、非常勤講師本人と管理職で確認し、非常勤講師の押印の提出を県教委は各校(校長)に求めた。
しかし、通知文に、「時間数の限度(1)発令期間内の総時間数は期間限度時間数を超えないこと。(2)各週の時間数は原則として、あらかじめ組まれている非常勤講師本人の週当たり委嘱時間数を超えないこと。」とあり、この項により、各現場では、「必要な仕事はする。仕事をしたら報酬を得る」が実現せず、「仕事はしなければならないが、報酬は出ない」状況が多々あることが分かってきた。また、学校によっては、新しい通知による報酬対象業務範囲の変更が知らされてないケースもあることが分かってきた。
これでは「何のため団体交渉で合意した(労働協約を締結した)のかわからない」と判断し、2016年8月3日に団交申し入れ、第7回交渉を9月7日に第8回交渉を9月29日に行った。9月29日の交渉で「時間数の限度は授業時間の限度であること」を確認し、両者は労働協約書に締結した。
8 むすびに変えて
この間、熊本教育ネットワークユニオンは、非常勤講師の置かれている現状を何とかしたいという自然な考えから出発し、その現状を悉皆アンケートで調査し、回収したアンケートから要求としてまとめ上げ、学習会を組織し、団体交渉を要求し、団体交渉で要求の実現を目指してきた。交渉で合意したことは労働協約を締結し、獲得した権利はきちんと実現させる取り組みをしている。この取り組みの中から、少しずつではあるが組織拡大もできている。また、非常勤講師から交渉成果に対する喜びの声も寄せられている。このような取り組みは、組合があるからできることである。
先ごろ発表された総務省調査によると、地方公務員の臨時・非常勤職員総数は64万人で2年前から4万5千人増加している。内訳はフルタイム20万人、3/4超21万人、3/4以下24万人となっている。臨時・非常勤職員のうち教員・講師は全国に9万人で事務補助職員(10万人)に次ぐが、これを団体区分・都道府県(政令市・市町村を除く集計と言う意味)では事務補助17,078人、義務制教育30,637人、義務以外教育20,239人と教育現場には多くの非正規職員が働いている。そして正規との置き換えが進行している。総務省調査では非正規教員・講師は46,530人(2005年)→57,327(2008)→78,937(2012)→92,671人(今回2016)と率・量とも驚くべき増加で、他の職種には見られない。定数削減と人件費抑制がその背景にある。国も県も教育分野での「複雑化する需要」に対し、非正規をもって補充してきたこともあるが、それは賃金の正規・非正規間の格差が非正規化を進ませたと言える。
このような中、全国では司法の判断を含む情勢の変化から総務省も新たな動きをせざるを得なくなり2014年文書を地方公共団体へ発出した。
安倍政権は支持率維持・参議院選挙対策で「同一労働同一賃金」を口にした。
私たちユニオンの力を発揮する情勢は整いつつある。
一方、総務省は特別職非常勤職をその中で「労働者性」の高い職は一般職非常勤講師へ任用根拠を移行するように指導してきている。「地方公務員の自律的労使関係制度に関する会議」が報告書を出し協約締結権を目前にした時期もあったが、民主党政権が崩壊し進もうとしていない。
私たちは、情勢の変化を念頭に置きつつ、現場で原則的な運動を展開して、労働を取りまく状況を一つ一つ、石を詰み上げるように、改善していくしかない。
(5回にわたる記事読んでくださいましてありがとうございました。ご意見をお聞かせください)
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