指定管理者制度の導入が進む公立図書館を考える
今泉克己
全国の公共図書館の状況
戦後の社会教育は、新しい憲法のもと教育基本法に基づき社会教育法、図書館法や博物館法に基づいて制度化された。特に、図書館は社会教育の重要な部分を担っており、地方自治体は図書館等を通じて、社会教育を保障する施策の推進に努めなければならないとされている。この図書館は21世紀に入り、指定管理者制度の導入(一種の「民営化」)により大きく変化している。
指定管理者制度の導入は何をもたらしているのか
指定管理者制度は2003年度の地方自治法の改定において私企業、NPOにも拡大され、図書館、博物館をはじめとする公的施設に対して地方自治体での導入が進んだ。
全国の公立図書館への導入状況は表1のようになっている。すでに613館もの図書館に指定管理者制度が導入されている。2020年度の公立の図書館の合計は3297館であるので、2005年度以降公立図書館の2割弱の館に指定管理者制度が導入されている。その結果、公共図書館は大半が公立図書館であるので、表2に見られるように職員数、予算額や受入図書数が大きく減少している。
公共図書館は1990年に1928館であったものが、2006年には3000館を超え、2020年では3316館(自治体の公立図書館は3297館)になっている。しかし、専任職員数は2001年の15347名をピークにして年々減少していき、2020年に9627人となっている。兼任職員は2006年1408人をピークにして減り続け2020年は1097人になっている。専任職員は2001年から20年間に5700人余りが削減され、兼任職員も2006年から14年間で300人余り減少していることになる。
予算額は2000年度の346億円をピークにして年々減少していき2020年度は279億円程になっている。20年間で67億円、19.3%の減少である。年間受入図書冊数は、2005年の2092万冊がピークとなり、その後は年度毎の増減はあるものの、減少していく。2020年度は1505万冊に低下している。587万冊、27%の減少となっている。(表2)
この結果どんなことが起きているのか。以下の記事を目にした。
茨城県守谷市で、市民から寄託され中央公民館に展示されていた貴重な資料「下町薬師堂俳額」(小林一茶をはじめとする俳人75人の俳句が木製の板に墨書きされた俳額で、江戸時代の文政6(1823)年奉納)を誤って破棄した事件があった。市教委の町田香教育長は「市民の信頼を失う結果になったことを深くおわび申し上げます。職員の意識向上、職務上の連携、確認を徹底し、再発防止をしていきたい」と話した(茨城新聞 2021年4月13日)。
貴重な郷土資料の収集、市民とともに進める図書館(博物館、公民館)活動や専任司書や学芸員等の確保と専門性の向上など、公的社会教育施設の果たす役割がどのようになっているのか検証を進めていきたいと思っている。
表1
http://www.jla.or.jp/Portals/0/data/iinkai/seisakukikaku/shiteikanri2019.pdf
表2
http://www.jla.or.jp/Portals/0/data/iinkai/chosa/pub_keinen2020.pdf
(出典は日本図書館協会のホームページ)