こども家庭庁設置法案を考える
今泉克己
今国会には参議院選挙を意識して与野党が対立するような法案は出されていないと報道されています。しかし、「こども家庭庁設置法案」は重大な問題を含んでおり、立憲民主党と社民党の合同会派は対案として、法案から家庭に関わる部分を外して子ども支援を中心とした「子どもの最善の利益が図られるための子ども施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律案」を上程しています。
2006年に改悪された教育基本法は教育の目標など重要な部分が改悪され、新設された第10条「家庭教育」は、後に安倍政権で制定が準備された「家庭教育支援法」に道を開くものです。もし、今国会に上程されている「こども家庭庁設置法案」が成立すれば、今後の国会で「家庭教育支援法」が可決されて、こども家庭庁の所掌事務の中に位置づけられるのではないかと危惧されます。学校教育、社会教育に留まらず、家庭教育にまで政府が侵入して来る端緒となる恐れが大きいと思います。悪名高き「戦時家庭教育指導要綱」(1942年)を想起すべき、との研究者の指摘もあります。また、熊本県をはじめ地方公共団体で「家庭教育支援条例」を制定していますし、増えていくようです。
家庭の子育てのための条件整備をすすめるのは当然重要な政策です。しかし、家庭の内面に関わっての第10条1項「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする」との規定は問題です。さらに、第10条2項では「国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。」と慎重さを示していますが、この慎重さを突破するのが、安倍政権以来自民党内部で進められている「家庭教育支援法案」ではないでしょうか。
やはり、2006に改悪された「06教育基本法」を改正し、1947年制定の「47教育基本法」に戻していくことが必要だと感じています。