「大人が消えている」
8月31日、故猪飼隆明さんの「お別れの会」が開かれた。猪飼先生は、熊本大学や大阪大学で教鞭を執られ、近代史の研究者として著名な方である。と同時に「くまもと九条の会」会長をはじめ、長い間熊本の平和運動を牽引してこられた。私は、2014年3月「秘密保護法廃止!くまもとの会(現;憲法ネット)」を結成した折に、「共同代表」に就任していただいたことでお見知りいただくことになり、お別れの会では「憲法ネット」事務局メンバーは受付を担当した。
さて、会は手取本町の「パレアホール」で開催され、350名程の参加(弔問)者で満杯になった。私は自家用車で街に出るとき、駐車場をまず考える。その日も3号線から上通に向かう路地にある「最大500円」の駐車場を目指したが生憎満杯。ぐるっと巡って「長崎書店」の四つ角から3号線に抜ける途中のコインパーキングに。残念ながら「最大1200円」だった。いつものように時間まで長崎書店をぶらぶら。改装して子どもの本のスペースが随分広くなったが、選書は相変わらずで、知的好奇心に触れてくる。何冊か手にした中から、一冊に絞ってレジに向かったが、まてまて、まだ読みかけの本があるじゃないかと棚に戻し、店を出て「DOUTOR(ドトール)」で「ミラノサンド」と「ブレンドコーヒーL(エル)」をトレイに載せ、件の「読みかけの」文庫本を読んだ。
会は熊本大学文学部三澤教授の「猪飼隆明先生の学問研究①近代天皇制国家形成過程に士族反乱と自由民権運動とを位置づける研究」そして「猪飼隆明先生の学問研究②ハンセン病史研究について」と題して専修大学の廣川和花教授が、それぞれ猪飼先生の功績を述べた。久しぶりにアカデミックな空間にいるような気分で、心地よい空間・おだやかな時間を過ごした。その廣川教授が冒頭に述べられた「最近読んだ本に『大人が消えている』ということが書かれていました。まさに猪飼先生を失ったことは、一人の本当の大人を失った気分です」という言葉に驚いた。「大人が消えている」その言葉は、長崎書店で購入しようとした内田樹さん著「だからあれほど言ったのに」の、第1章「令和時代の不自由な現実」の冒頭の一節だったのだ。
私は、猪飼先生に心からの哀悼の気持ちを捧げた後、鶴屋地階のポンパドールでフランスパンと餡パンを買い、ついでに蜂楽饅頭をと思ったら長蛇の列。ならばと、駐車場へ行く道すがらの「蜂楽饅頭上通本店」で、待ち時間なく白黒同数のあったか饅頭を手に入れた。もちろん長崎書店に立ち寄り、「だからあれほど言ったのに」(初版2024年3月28日、2024年6月24日第5版発行)を購入したのは当然である。
「私が『今の日本社会には大人がいなくなった』と思っているのは、『その人がいるおかげで、周りの人たちの知性が活性化し、感情が豊かになり、ものの考え方が深まるような人』がいなければならないということについての国民的合意がないという現実を指す。今の日本では、だれもそんな人を求めていないのだ(同書より)」面白いから読んでみて下さい。
会の当日、宇野昭彦保険医協会名誉会長が100歳で亡くなられていることを知った、季刊誌「KUMAMOTO」編集者の廣島正さんも最近亡くなられて廃刊になるらしい。そして私が大変お世話になり指導いただいた丸山澄雄元高教組委員長も今年七月に鬼籍に入られた。
合掌 (Trout 2024.9.8)