熊本教育ネットワークユニオン

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肥後の古刹を巡る~その1・飯田山常楽寺~

   肥後の古刹を巡る~その1・飯田山常楽寺

         

 飯田山常楽寺益城町飯田山の八合目にあり、天台宗の僧により創建されたそうだ。西暦583年の開基というから、何と日本に仏教が伝来して間もない頃のことである。県内はおろか、全国的にも屈指の歴史を持つ寺と言っていいのではないか。あの法隆寺(607年創建)よりも古いことになる(注1)。最も栄えたのは平安中期で、当時300人の僧侶がここで学んでいたとガイドブックにはある。

 現在の常楽寺には山門と本堂、荒積みの石段のみが残っていた。この付近一帯の仏閣は小西行長によってすべて焼き払われているので、今日の建物もおそらく江戸期以後のものであろう。巨木に囲まれた境内には静寂が漂っていたが、壁に残された落書きや、ゴルフ場造成のため参道を寸断されたことに対する信徒の抗議の言葉(山麓の看板)に、この寺院の「今は昔」が如実に語られている気がした。

 さて山頂を目指そう。登山道は本堂の右手に続いていた。山頂手前には小さな水たまりがあって、金峰山との背比べ伝説の由来となったであろうことが想像される。頂は広い台地であった。檜が植林されていて三角点に立っても展望は得られない。台風の余波であろうか風が強かった。轟々と響いて、すらりと伸びた檜の幹が数十本、いや数百本、まるで逆さ振り子のように一斉に、右に左に大きく揺れた。

 

(注1)伝承によると、飛鳥時代に日羅上人という僧が百済から千手観音と九重の塔を持ち帰って開基したそうです。だが別に、700年代の創建という説と平安時代後期の創建という説もあって真相は闇の中。いずれにせよ、平安時代以前の古刹であるということは疑いようがないと思われます。

 

(あとがき)山登りをしていて山麓であるいは山中で、何度か古寺に出会ったことがあります。住職不在の、いかにも山寺ふうの古色蒼然とした山門や拝殿が残る寺、あるいは、広い庭や荘厳な伽藍を構えた風格のある寺など。どの寺も登山の後の疲れた体を癒すのに恰好の休憩所となってくれました。歴史のある仏像が保存されている寺院も多く、ぜひ再訪したいという気持を抱かせてくれました。

 タイトルを「古刹を巡る」としています。がこれは、「巡礼」のような宗教的な、または学究的なものではありません。仏教の研究者でも歴史の専門家でもない、単なる山好きの一個人が、旅の途中で立ち寄ったに過ぎません。そして見物する過程で学んだこと、感じたことを文章化したものであるということを付記しておきます。飯田山登山はもう20年以上も前のことですが、その後調べたことも含めて新たに書き直しました。今後訪ねるであろうお寺も含めて、不定期に投稿させていただきたいと思います。


                        ~オウシャン・セイリング~