熊本教育ネットワークユニオン

活動の報告と相談の窓口です。またブログ担当者の学習の跡でもあります。過去の記事をご覧になるときは下のメニュー欄をクリックください

MENU

「受忍しない」 ー大江健三郎さん「伝える言葉」プラスよりー

「受忍しない」 ー大江健三郎さん「伝える言葉」プラスよりー

 

 ヒロシマ・ノートの後だからではないが、「沖縄ノート」にかかわって書いてみます。

 私は、朝日新聞に連載されていた「伝える言葉」が楽しみでした。そのことは過去にこのブログにも書きました。

( https://kenu2015.hatenablog.com/entry/2023/03/27/002954 )

 「伝える言葉」は、今では『「伝える言葉」プラス』(朝日文庫)として読むことができます。

 

 「受忍しない」(文庫p.74)が書かれたのは2005年です。この年の8月大江健三郎さんと岩波書店名誉毀損で提訴されれます(大阪地裁)。この文に、大江さんは、裁判が「自由主義史観研究会のメンバーたちのキャンペーンと、狙いの定め方も攻撃ぶりも全く同じ」と述べられています。事実、提訴者の一人は提訴段階で「沖縄ノート」を読んでおらず、もう一人は提訴の提案を受け多少読んだということが2009年の高裁の審理で明らかになってきます(下に紹介の論文にあります)。 大江さんは、「証言に立ち、・・中学生たちにもよく理解してもらえる語り方を工夫するつもりです。」と書かれています。 結局、この裁判は名誉毀損の訴えは退けられます(裁判記録は『記録・沖縄「集団自決」裁判』絶版で古書で5300円)。

https://core.ac.uk/download/pdf/83120742.pdf は興味深い論文です(コピーしブラウザの検索欄に貼り付けてください)。)

 

 「受忍しない」という表題は、次の資料(基本理念の冒頭の1)にある「受忍すべき」にNo!と述べられていることからきているようです。

 

 この考えを、政府は、過去の戦争時のことだけでなく、これから起こる(起こす)戦争についても「そうなのだ」と言っています。そのことを、大江さんは2002年の衆議院での「有事関連3法案」の「武力攻撃事態」の政府見解から説明されます。

 そして、このように結ばれます。

 「広島・長崎で、また沖縄で、人間として決して受忍できない苦しみを、人間がこうむったこと。それを記憶し続け、そして新しい世代に伝えるために正直で勇敢な努力をすることの大切さを思います。」と。

 先日(2023年8月15日)あった「憲法改悪を許さない!くまもとネットワーク」主催の「STOP! 新たな戦前」の取組みはそれに応えるものでした。関係者の皆さん(特にM永さん)ありがとうございました。

(小林敏夫